分子の回転・振動・電子遷移 各論

電子遷移

分子内の電子が低エネルギー状態(基底状態)と高エネルギー状態(励起状態)の間を遷移することです。この電子遷移を観測したものが電子スペクトルです。
分子は紫外可視光を吸収したり放出したりして電子遷移しますが、振動遷移や回転遷移にも影響するため、紫外可視吸光スペクトルは幅広くなります(幅広い範囲でピークが観測される)。

 一概に遷移するといっても分子軌道の性質によって分類される。

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紫外可視光領域で重要なのは π - π 、n - π遷移です。

これまでは基底状態から励起状態への遷移についてお話しました。

これからは励起状態から基底状態への遷移の話をしていきます。励起状態から基底状態へ遷移するときエネルギーは光(放射遷移)や熱(無放射遷移)として放出されます。

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蛍光とは励起一重項状態から基底一重項状態へ遷移する際に放射される光です。

リン光とは励起一重項状態から励起三重項状態へ無放射遷移して励起三重項状態から基底一重項状態に放射される光をいいます。

もっとよく知りたい方は

https://blog.hatena.ne.jp/aribabi/aribabi.hatenablog.com/edit?entry=17391345971621305860

 

振動遷移

分子には伸縮振動と変角振動の基準振動があります。分子の振動準位の変化を観測したものが振動スペクトルです。

伸縮振動

結合の伸び縮み(原子間の距離の変)
対称伸縮振動と逆対称伸縮振動に分かれる。

変角振動

結合の角度が変化する

*教科書によっては同じことでも表現が異なることがあります。

水と二酸化炭素の基準振動

変角振動

逆対称伸縮振動

対称伸縮振動

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赤外活性

赤外活性

赤外活性

 

二酸化炭素

変角振動

逆対称伸縮振動

対称伸縮振動

 

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赤外活性

赤外活性

赤外不活性

 

回転遷移


マイクロ波を照射すると分子の内部回転(結合軸まわりの回転など)がエネルギーを受け取ってより高速の回転状態に移るのが回転遷移です。これを観測したものが回転スペクトルです。

分子の回転でマイクロ波が吸収されるのは 双極子が電磁波の振動電場と相互作用するからです。 そのため、無極性分子はマイクロ波不活性となります。

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