電磁波の性質
電磁波とは
波動性と粒子性の二面性をもち、真空での電磁波の速度は光速と等しく、2.9979×10^8m/sです。
hはプランク定数
波長とエネルギーの関係
主な電磁波の特徴
γ・X線 |
物質透過作用が大きい |
紫外線 |
電子遷移を起こす |
赤外線 |
振動エネルギーが関与 |
回転や電子スピンに関与 |
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ラジオ波 |
核スピンエネルギー |
分子の回転・振動・電子遷移
原子や分子に電磁波を照射することでその電磁波のエネルギーに相当するエネルギー準位の遷移が起こります。つまり、原子や分子の回転エネルギー、振動エネルギー、電子エネルギーが変化します。
この性質を用いて様々な機器分析が行われています。
測定法 |
原理 |
できること |
電磁波 |
紫外可視吸光度測定法 |
共役二重結合が紫外可視光を 吸収する |
二重結合の 確認 |
紫外 可視光 |
蛍光光度法 |
蛍光物質に特定波長の励起光を照射して放射される蛍光を測定 |
蛍光物質の |
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原子吸光光度法 |
基底状態の原子の光の吸収を 測定 |
無機金属の |
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旋光分散・円二色性 |
旋光・偏光 |
光学活性物質 |
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赤外吸収スペクトル |
赤外線が試料を通過するときに吸収される度合いを波数について測定 測定の補正には ポリスチレン膜を使用 |
官能基の 確認 |
赤外線 |
核磁気共鳴スペクトル |
特有のラジオ波に共鳴して低から高エネルギー状態になった核スピンのラジオ波の吸収を測定 |
プロトンの 状態 |
ラジオ波 |
X線結晶構造解析 |
X線を照射して得られる 回折斑点を解析して単位格子に含まれる原子の位置を特定 |
分子の 立体構造 |
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粉末X線回折 |
粉末資料にX線を照射して電子を強制振動させることで解析 |
結晶多形 の同定
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因みに、電子遷移、振動遷移、回転遷移の遷移幅についての問題を出されることがあります。
電子遷移の幅は 電子遷移 > 振動遷移 > 回転遷移 です。
遷移とかエネルギー準位についてはこちら
http://www.st.hirosaki-u.ac.jp/~jun/mhp0603/mhp0603_33.html
この解説の中でのエネルギーは不連続というのは
左側の階段分布のようにデジタル的な飛び飛びという意味の不連続ということではなく
右側のようなピークと最低値の間は曲線であり正規分布的な飛び飛び(不連続性)を意味します。
電磁波の吸収、放射の測定
透過率と吸光度
電磁波の吸収の度合いは電磁波の強度の変化で表されます。強度I0の入射光が試料溶液を通り強度Iの透過光になります。 I / I0=透過度t 、%で表したものが透過率Tとなります。吸光度Aは試料の吸収の度合いを表したものです。
入射光と透過光の関係
Lambert-Beerの法則
溶液の吸光度はその光路の長さよび(層長)と濃度に比例するという法則です。吸光度Aが大きければその試料溶液はその波長の光を多く吸収することを意味します。
吸光度は、溶液の厚さl(単位はcm)と試料溶液の濃度c(単位はmol/L)によって変化します。
*吸光度は 温度と波長 に依存して 溶液のpHや溶媒によっても変化します。
*モル吸光係数εは、試料溶液の溶質によって決まる定数です。
濃度cを1mol/L,層長1cmとしたときの吸光係数をモル吸光係数といいます。
また、濃度cを1w/v%(1g/100ml)で層長が1cmとしたときの吸光係数を
比吸光度 E1cm1%といいます。これらは溶質(物質)に固有の値をとります。
例題
Q
1.3mg/mlのBSA溶液を用いて吸光度を測定したところ、280nm付近の波長に極大吸収をもつ吸収スペクトルを示した。
この時の280nmにおける吸光度は0.650(セル長=1cm)であった。BSAの比吸光度を算出せよ。
A
比吸光度は1w/v%(1g/100ml)の濃度の溶液で層長1cmでの吸光度
のことなので
1.3mg/mL = 0.13w/v%
吸光度0.650なので
1 w/v% :0.13w/v% = x :0.650
x = 5.00
比吸光度は5.00
あと大切なのは
A=εclは、濃度一定ならば、εcが一定であるからA=(εc)lで、吸光度は厚さに比例します。これをランベルトの法則といいます。
層長lが一定ならばA=(εl)でcあり、濃度に比例することになります。
これをベールの法則といいます。
赤字の部分をきちんと区別して覚えておきましょう。
実際にはどのように使うのか?
精製タンパク質の濃度を知る:分光分析によるタンパク質定量 : Got it! Lab.